ご挨拶

 私は埼玉県秩父市の街中で生まれ、家業は大工の環境で育ちました。
「ちちぶ」では、紅葉が終り、霜が降りる頃、ユネスコ世界遺産に登録された日本三大曳山祭りの一つで、日本三大美祭の一つにもが数えられる「秩父夜祭」が行われます。寛文年間から300年以上続けられているこのお祭りには、高さ6m、重さ10トンを超える「笠鉾、屋台」が、テンポの速い豪快な「秩父屋台囃子」を、秩父山中に木霊させながら曳行されます。金色の飾り金具や極彩色の彫刻、後ろ幕は金色の刺繍で装飾され「動く陽明門」と言われるほど豪華絢爛で、釘を一本も使わない木組みで組み立てられています。傾斜角25度、長さ50mの団子坂ではギシギシと木組みを歪ませながら引き上げられます。子供の頃、「壊れちゃわないのかな?」と、いつも思っていました。

秩父の笠鉾、屋台はもちろんですが、日本の多くの山車は日本伝統の木組み構造でできています。ギシギシと揺れても壊れないのは、古民家と同じ免震構造だっだと気付きました。これが日本古来から伝わる技、「伝統」なのです。

私の先輩、仲間のほとんどが、このお祭りに関わっています。お客様が先人から大切に引き継いできた家、「古民家」に、私達が大切にしてきた伝統の技で、末永く住んでいただける建物、未来の子供たちに引き継いでいただける建物を建築していきたいと思います。

一般社団法人古材リユース推進協会埼玉支部
支部長 児玉 義丈